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今夜、あなたの猫になる

今夜、あなたの猫になる【17】

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 25メートルプールで、二時間ほど流して泳いだ後、高めの温度に設定されたリラクゼーションプールへと移動する。
 ジャグジーやマッサージベッドを備えたそのスペースには、日曜日ということもあって、多くの会員が集まっていた。
 広々としたジャグジーに入ろうとすると、そこにいた遼真が、先に大貴を見つけて片手を挙げた。

「──よお、大貴。元気にしてっか?」

 無視するわけにもいかず、大貴がその隣に身を落ち着けると、遼真はテンション高く話しかけてきた。

「なあ、合コンやろうぜ、合コン。
 こないだ声かけた子が、大学の友達集めてくれるってよ。
 結構レベル高かったんだぜ」
「ホント……好きだねえ、お前も」

 半ば呆れつつ、明るいプールの天井を仰いだ大貴は溜息をついた。
 自分は大変な目に遭ったというのに、能天気に騒げる遼真がつくづく羨ましくなってくる。
 しかし不意に庄領の顔を思い出し、大貴は両目を眇めた。

「……行ってやろうじゃないか、その合コン」
「──マジでぇ?」

 大貴が真面目に取り合うとは思っていなかったのか、遼真が素っ頓狂な声を上げた。

「どーゆう心境の変化なわけ? アレルギー、大丈夫なのか、お前?」

「自分から誘っといて、聞くなよ、バカ。
 アレルギーは、薬飲んでくから大丈夫だよ」

 そう。自分はもともとノンケで、女子が好きなのだ。
 厄介な『女子アレルギー』があるからといって、安易に男と付き合おうなどと考えるのは、やはり邪道すぎる。

(とにかく……さっさと彼女作って、あいつとはサヨナラだ。それで片が付く)

 若気の至りは、一度きりでいい。
 男同士のセックスにちょっと興味があって、一度だけ遊んでみたけど、やっぱりダメだった──ただ、それだけの事だ。
 リラックスするはずのジャグジーの中で、大貴が眉間に皺を寄せて考え込んでいると、茫洋とした声で遼真が言った。

「──なあ、腹減ってねえか、大貴?
 おごってやるから、ラーメン食いに行こうぜ」

 その声ではっと我に返った大貴は、悩みなど無さそうに笑っている遼真を見つめ、「おう」とうなずいた。
 その時、二人のやり取りを聞いていたのか、遼真とは反対側にいた男が、くすくすと笑い出した。

「仲が良いんだねえ、君たち。大学生?」

 大貴が振り向くと、そこに、以前シャワールームでぶつかった男がいた。

「……ええ、まあ。中学からの腐れ縁なんですけど」

 大貴が答えると、途端に遼真が文句を言い出した。

「腐れ縁って、酷くねーか?
 俺とお前は、共に切磋琢磨した仲で、仲良く一緒に浪人生活も送ったじゃないか。
 マンガにもあるだろ? 男の友情は、大事なモンなんだぞ」

 遼真は大らかに笑いながら、真っ黒に日焼けした長い腕を伸ばして、大貴の肩をがっしりと抱き寄せた。

「触んな、バカ。お前は友情より、合コンだろーが」
「それとこれとは、別の話ってことで」

 あっけらかんと笑う遼真の腕を押しやると、大貴はおかしそうに笑っている男に謝った。

「すみません、騒々しくて」
「いや、楽しそうでいいよ。
 何だか、昔を思い出すなあと思って、君たちを見てたんだ」

 男はそう言うと、「じゃあ、お先に」と二人に断って、ジャグジーから出て行った。
 すると、その男の背中を見送っていた遼真が、急に真顔になって大貴に聞いた。

「──で、誰よ、あれ?」
「さあ、知らないけど。
 ジムの常連さんじゃないのか? こないだも会ったし」

 大貴が答えると、遼真は「ふーん」と呟き、少し困惑しているような表情を浮かべた。

「まあ、いっか。俺らも出ようぜ。マジ、腹減った」

 肩をすくめた遼真は、すぐにいつもの明るい笑顔に戻っていた。



 大盛りラーメンに餃子3皿、さらに大盛りライスを平らげている遼真を眺めていた大貴は、思わず感心してしまった。

「……相変わらず、よく食うな、お前」

 確かに自分も泳いだ後だが、遼真と同じ量は、とても食べられそうにない。

「餃子……半分、食っていいぞ」

 いつもなら、餃子一皿くらいはラーメンと一緒に完食するのだが、精神的なショックもあってか、今日はあまり食が進まなかった。

「──んじゃ、ありがたく。でも、お前、何かあったの?
 こんだけしか食べないって、少食過ぎんだろ」

 そう心配しつつも、遠慮する気は無いのか、遼真は残った餃子の皿を手元に引き寄せた。

「別に……大した事じゃないけどさ」

 テーブルに肘をついて嘆息をもらした大貴は、旺盛な食欲を見せる遼真をじっと眺めた。
 髪は脱色されて金髪になっているが、黒々と日焼けした肌にはよく似合う。
 野性的な顔立ちで、体格も良い──遼真は、真夏の海がよく似合う男だった。
 それに比べて庄領は、真っ暗な夜の海のように謎めいていて、底知れない。
 浅瀬だと思って踏み込んだら、一気に足を取られて、深淵に引きずり込まれてしまいそうな危うさがあった。

「……なあ、遼真。例えばさ。
 俺がもし、お前に『キスしたい』って言い出したら、お前、どうする?」

 深い意図も無く大貴が問いかけると、ラーメンを勢いよくすすっていた遼真が突然むせた。
 激しく咳き込み、胸元を拳で叩いた後で、「はあ?」と涙目になりながら聞き返してくる。

「──だから、もしもの話だって」

 まじまじと見つめられると、さすがに気まずい。
 視線を揺らした大貴は、言い訳するように小声で呟いた。

「もし、女と完全に付き合えなくなったら……って考えててさ。
 お前なら、試しにキスさせてくれるかなーとか思って」

 すると、遼真は眉間に深い皺を寄せて、ラーメンのスープをじっと睨みつけた。
 その瞳に、もの凄い葛藤が浮かんでいるのを見て、大貴は苦笑した。

「……ちょっと、考えさせてくれ」

 珍しく真剣に悩んでいるような遼真の顔を見返し、大貴は慌ててフォローした。

「いや、ホントに冗談だから。そんなに、気にすんな」

 遼真が悩むのも無理はない、と思う。
 同性からキスを迫られて、すぐにOKを出せる男はいない。
 気持ち悪いと感じるのがノーマルな反応なのだから、いかに「チャラ男」な遼真でも、とっさに考え込んでしまうだろう。

(それなのに、俺は……)

 庄領のキスに反応して、感じてしまった。
 雰囲気に流されたにしても、男としては情けない反応だろう。

(……あー、やめやめ。思い出すな、俺)

 無意識に頭を振った大貴は、箸が完全に止まっている遼真に、話題を変えて話しかけた。

「──それより、遼真。合コン、いつやるんだ?」



 翌、月曜日。
 二日ぶりに倶楽部『ファロス』のドアをくぐった大貴は、ぼんやりした気分を引きずりながらバーに向かった。
 大学の講義に出ていても、今日は全く集中できず、教授の話を上の空で聞いていた。
考えないようにしていても、何故か庄領と過ごした時間を思い出してしまい、講義中に突然大声を上げてしまったりした。

「──何事かね、君?」

 講義を中断された教授は唖然としていたし、静かだった教室にはどっと笑いが広がった。
 突っ立っていた大貴は、茹で蛸のように赤くなって、教授に平謝りするしかなかった。

(……このままじゃ、マズイ)

 そうして、大貴は思いを新たにしたのだ。
 バーカウンターには、タロットカードを広げている嶺村の姿があった。

「おかえり、大ちゃん。千晴とのデート、どうだった?」

 にこにこ微笑む嶺村の顔を見て、大貴はまた暗鬱な溜息をついた。

「……デートじゃないです。あれも一応、仕事ですから」

 素っ気なく答えながらスツールに腰掛けると、嶺村はグラスに入った水をテーブルに置き、大貴の顔をのぞき込んだ。

「楽しくなかったの?」
「楽しくないってわけじゃないですけど──。
 それより、何をやってるんですか?」

 ことさら憮然とした声になっていた大貴は、首を傾げる嶺村を見返し、話題をすり替えた。

「大ちゃんと千晴の恋愛が、上手くいくかどうかって占ってたとこ」
「何言ってんですか! 恋愛じゃないですよ!」

 大貴が顔を真っ赤にして噛みつくと、嶺村は悪戯っぽい流し目を向けながら、一枚のカードを指先に閃かせた。

「未来は明るいよ。『世界』が出ているからねえ。
 まあ、そこに行きつくまでには、いろいろ葛藤がありそうだけど……」

 唖然としつつも、大貴はその意味を問うた。

「『世界』って何ですか?」
「完成とか成就とか。この流れでいくと、ハッピーエンドってことになるかなあ」

 それを聞いて思わず眩暈を感じ、大貴は「あり得ない」と頭を振った。
 すると、嶺村はくすくす笑いながら、衣裳が入った紙袋をテーブルに置いた。

「まあ、でも、仕事は頑張ろうね。
 千晴とのゲームは終わったけど、次の候補者が続々と控えているんだよ。
 大ちゃん、一気に人気が出たからね」

 その言葉に何故かショックを感じていると、嶺村が一冊の雑誌を紙袋に放り込んだ。

「そうそう、これ、千晴の記事が出てるから、読んでご覧。
 あいつがメディアに出るの、もの凄く珍しいんだよ」

 嶺村の言葉も耳に入らず、大貴はしばらく茫然としていた。

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